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※こちらのショートストーリは、メルマガ寄稿文に加筆修正をしたものです。

興産新聞社社会部の若きイケメン・カメラマン、神庭亮一とは・・・? 

興産新聞に入社してから一年半が経った秋の日。
雪乃は舞台を観るため、神庭と共に赤坂を訪れていた。
観劇後ふたりは、やはり赤坂サカス内にあるフレンチのビストロに入った。
ソファ席に悠々と座った神庭は、ちょうど今、メニューを開いたところである。

と、雪乃の背後から、声がかかった。
「あれーもしかして、雪乃?」
雪乃が振り向くと、そこには佐倉あやが立っている。
「うわ。あや!」
驚き声の雪乃に応え、あやも甲高い声を上げる。
「てゆーか、スゴイ偶然なんだけど〜!」
「そだね。テレビにあやが出てるの、ときどき見てるよ。活躍してるよね」
「そうでもないし〜・・・で、この方、だあれ?」
あやが大きい目を更にさらに大きく見開いて、雪乃と神庭を交互に見つめる。と、神庭が答える。
「えー、神庭と言います」
雪乃はすかさず、
「うちの社のカメラマンなの」
と、付け加えた。
すると、あやはその超美少女っぽい外見を最大限に活かした笑顔を浮かべ、
「あたし、佐倉あやです!今、収録の合間なの。少しお茶飲みたくて来てみたんだけど。もうめちゃめちゃ忙しくて〜なんかスケジュール入り過ぎ?あ、何かまた新しい番組出演も決まっちゃったし・・・」
と一気に喋り出した。
(こうなると、あやも長いんだよね)
雪乃が内心、ヒキ気味になっていると、神庭がおもむろに立ち上がり、
「ああ、そう。じゃあ収録に戻んなくちゃな。頑張ってね」
と言い放つと、あやの肩にそれとなく手を添え、何とあやをくるりと“回れ右”させ、そのまま出口までエスコートしてしまった。
「・・・」
これまで遭遇したことの無い事態に、あやは、あくまで無言だった・・・。

神庭が席に戻ると、びっくりしたままの雪乃が固まっている。
「あの、さ。あやにあんなことした男の人、初めて見たんだけど」
すると神庭は、しれっと、
「そうなの?じゃあ彼女、今日はいい経験したね」
と言い、再度、マキシム・ド・パリのメニューに視線を落とした。

(この人って、なにげに怖いかも・・・)
“一見バランサーのようでいて、実は常にマイペース”の神庭を眺め、雪乃はつくづく思ったのであった。

 

さかき

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