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※こちらのショートストーリは、メルマガ寄稿文に加筆修正をしたものです。

霧島内閣の首相秘書・丹後の憂鬱 

私はプラトンを愛する。
彼の著作に触れるとき、私の脳は歓喜する。
智慧の実をもいだイヴは楽園を追放された。が、しかし、それに何の問題があろう?
問題どころか、そこがマンカインドの出発点であるのは、火を見るより明らかである。
人類は、“知”という、甘美この上ない果実を得たのだ。
もしや神は、人間に嫉妬したのではあるまいか?
さもありなん、創造主はその立場ゆえ、行動の幅を酷く狭められている。
人の子の自由に生きる様は、神の心中に、劣等感のみ引き起こすのやもしれぬ。
・・・話が逸れた。
プラトンに、戻ろう。
イデアの世界に、美があり、理想がある。
現実世界に在る我々は、イデアの写し絵、または似姿を、見ているに過ぎない。
この世の事物など、幻であり、大きな意味を為さないのだ。

「丹後さーん!」

私を呼ぶ、女性の声が聞こえる。
ああ、思索にふける時間ももう終わりか。
小柄な姿が近づいてきた。

「ちょっと、教えていただきたいんですけど」

う、いつも通り、私への好意をひしひしと感じる。
しかし、しかし・・・

・・・諸君、私は、25歳未満の女子が好きだ・・・!

これだけは、神でさえ如何ともし難い、厳然たる事実なのである。
イデアとか何とか、寝言を言っている場合ではない!

私は生真面目な表情をつくると、礼儀正しく立ち上がった。
「かしこまりました、総理」

 

さかき

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