short-short

※こちらのショートストーリは、メルマガ寄稿文に加筆修正をしたものです。

女子大生・雪乃の“夏休みの終わり” 

潮風が、雪乃のアッシュ・ブラウンの髪を揺らし、うなじをくすぐった。
坂道の向こうに、七里ガ浜が臨める。

高台にあるオープン・カフェ。
慶和大学の湘南キャンパスに通う学生、一之宮雪乃は、ケータイでニュースサイトを流し読みしている。
デコなどとは無縁な、シンプルなデザインの二つ折り携帯だ。
同じく地味なシルバーのアイポッドからは、気に入りのフジファブリックの楽曲が、耳に流れ込む。

思い返すと、今年の夏季休暇は退屈だった。
雪乃の彼氏の翔は、7月から海外旅行に出かけたきり、未だ帰国していない。
残った雪乃は、仕方なく、暇つぶしに遊ぶ毎日だった。
同じゼミの友人、あやと若菜と連れ立って、マルイやルミネ、ラフォーレのセール巡りをしたり。
サークル仲間とダーツ・バーに通ったり。
しかし、様々してはみたものの、消化不良であることに変わりはなかった。
「・・・わたしも何処か、行きたかったかも」
せっかくの長期休暇、翔がいないのであれば、自分も留学などすれば良かったと、今更に思う。
雪乃はけっこう、語学が得意だ。
先日のTOEICでは、800点を軽く上回った程である。
昨年と同様に、バイト代を貯めてオクスフォードの語学研修に行けば、今頃、何か楽しい事件でも起きていたのだろうか?

手にしたペリエのグラス越しに、海の青が映る。
大学三年の夏休み。
この休みが終われば、もう就職活動に本腰を入れなければならない。
何となく報道に関わりたいと考え、大手マスコミに就職しようと思い描いていた雪乃だったが、とうとう今秋から就活の本番を迎えるのだ。
どう転んだとしても、一年半後、自分は社会人・・・。
大学生、という、人生でもっとも自由きままな期間の、終わりが見えてくる。

(今夜は花火とか、してみようか)
雪乃はウエブを終了し、サークル仲間にメールを打ち始めた。

 

さかき

recent entry

shortstory titles

monthly archive

© Ren Sakaki. All Rights Reserved.