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※こちらのショートストーリは、メルマガ寄稿文に加筆修正をしたものです。

霧島内閣の財相・朝生一郎の内包する、驚愕の事実 

蝉の鳴き声がいささかシツコイほどに響く、八月の午後。
庭園の花壇には、大きく花開いたヒマワリが散見される。
都会の一隅ながら、青空をバックに見事に咲き誇っているのだ。

戸外の暑さとは対照的に涼やかな朝生の執務室に、若い女性が飛び込んできた。
「おじ様!」
ひとりで書類に目を通していた朝生は、顔を上げ、彼女に応えた。
「ノックをしてくださいますか、総理」
さくら子は慌てて廊下に舞い戻り、今度はノックをして入りなおした。
その律儀な様子に、朝生は笑ってしまう。
「総理、いや・・・座りたまえ、さくら子君。で、そのように急いで、どうしたのかな」
すっかり“仲良しのおじ様”に戻った朝生に促され、さくら子は一気にまくしたてる。
「国民からの投書があったの、コレコイのショート・ストーリーに、おじ様に出て欲しいって・・・って、おじ様、そんなこと無理でしょう???」
すると朝生は、ニヤニヤ笑いを浮かべ、驚愕の情報を口にした。
「いや、さくら子君。ショート・ストーリーどころか、今度、私がメインの小説が出るんだよ」
さくら子は、びっくりして、口を大きく開けてしまった。
「え・・・メインて?だって、わたしが主人公だったハズよね・・・?!」
「さあ、それはどうかな」
朝生は椅子から立ち上がると、しぐさ軽やかにジャケットを羽織った。
「もう暫く待っていなさい。九月にはおそらく、君の手元にも届くだろうからね」
そしてドアに向かうと、未だポカンとしたままのさくら子を振り返り、
「それでは総理、私はこの後、会議が入っておりますので、失礼いたします」
と言い残し、朝生は消えた。

さくら子は、キツネにつままれた気分で、ドアを見つめるばかりであった。

 

さかき

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