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※こちらのショートストーリは、メルマガ寄稿文に加筆修正をしたものです。

霧島さくら子の万能主治医“藤井聡”という男 

九条が驚いたように声を上げた。
「あれ?『新・日本経済新聞』の執筆陣に、藤井教授、という方がいらっしゃいますね。これって・・・」
「そう、わたしの主治医の藤井先生」
「やっぱり!さすが、含蓄あるお言葉だなぁ」
さくら子はパソコンから視線を外し、伸びをしながら九条に答える。
「藤井先生は心理学も修められてるのよ。・・・わたし、政治っていうのは、理論に加えて、人の気持ちが分からなければいけないと思うの。だって、社会って、“社会”というものが明確に存在してるって言うよりも、“人と人との関係性”こそが社会でしょう?だから、土木工学と心理学の両方に造詣の深い藤井先生を、すっごく尊敬してるし、頼りにしてるの」
さくら子が思わず熱く語ると、丹後が感心したように口を開いた。
「なるほど、ソーシャル・キャピタルの考えとも類似点がありますね。理論だけでは机上の空論となる可能性もあるけれど、“人間の相互関連性”という要素も十二分に考慮に入れることで、理論がより実現性を帯びる、ということでしょうか」
「えーと?・・・うん、そんな感じです」
(何故、丹後さんが喋ると、必要以上に難しく聞こえるのかしら・・・)
ふと、九条が怪訝な表情を浮かべた。
「あの、藤井先生って、医師として、官邸につめていらっしゃいますよね。いったいどうやって、大学の先生と、首相の主治医を兼任できるんでしょう?」
「そこには、触れちゃいけないんだってば。強いて言うなら、“残像”じゃない?」
「ざ、残像・・・?????」

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