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※こちらのショートストーリは、メルマガ寄稿文に加筆修正をしたものです。

祖国の為、日夜戦う、男たち(ヴァージョン2) 

俺は山道を急いでいる。
追手から逃れるため、とにかく両の足を交互に、スゴイ速さで動かし続けている。

あいにくと今夜の月は満月だ。
通常であれば俺好みの美しい夜である。
しかし今日の自分にとっては、月はただの邪魔者でしかあり得ない。
闇を照らし、隠されるべき俺の姿をも白く浮かび上がらせてしまうからだ。

ガサリ。

背後で音がした。
俺は背筋を凍らせ、その場に止まる。
短銃をしっかりと握り直し、俺は静かに振り返った。
すると。

(く・・・クララが立ってる・・・?)

俺は目を疑った。
なんとそこには、眼前の数センチの距離にまで迫った“仁王立ちのクララ”・・・もとい、「倉山」がいたのだから。

~解説始まり~

説明しよう!
「倉山」とは、言わずと知れた、我らが日本国の誇る珍獣である。
別名を「クララ」と言い、その眼光の鋭さとマシンガン・トークの妙から、属する「保守王子属」の内でも特に珍重されている。
紀伊山地を中心に生息し、戦後は著しく個体数の減少傾向にあったことから、昨年とうとう国の天然記念物にも指定された。
さてこの「倉山」、実際に手に取ってみると、遠くから見ているのと段違いに「オトコマエ」だ!
読者のみんなも是非この夏、「倉山」に直接触れてみよう!

~解説終わり~

毛穴までガッツリ見えるほどの超・至近距離の倉山に恐れをなし、俺は山道にへたり込んだ。

「クララ、待ってくれ!
 俺は、お前のファンだ、友達だ!
 ・・・そうだ、ここに、お前の大好物の『稲田姫の生写真』がある!
 これ、欲しいだろう!?」

目の前の倉山は、俄かに勢いを落とした。
それどころか、稲田姫の生写真を食い入るように見つめたではないか!

「稲田姫、好きだよな?
 俺も好きなんだ・・・。
 まさに救国のお姫様だと、俺も思ってるんだ・・・」

すると倉山は、しかし、稲田姫の生写真を、バシッと撥ね退けたのだ。
ちょ・・・!

「おま、何なん・・・!?
 人が善意で出してやればその態度、いったい何やの?
 俺は“稲田姫”とか“高市の上”とか、めっさ好きなんやんか・・・?
 それを何、ひとの夢までサラッと否定しとんの、自分?」

俺が“マジキレ”しかけたのを見て取ると、倉山は本来の恐ろしさをその顔に表した。
・・・正真正銘のチキンでもある俺は即座に、再度、下手に出ることにした。

「わかった!
 どうだ、実はサヤ姫が好みなんだろう!
 まったく、このエロ助め!」

俺がお追従笑いと共に差し出したSAYA姫のアルバムを、倉山はねっとりとした視線で舐る。
と、いきなり凄い勢いでバリバリと喰った。
そして美味そうに飲み込んだ・・・。

「いや、えーと、マジすいませんでした。
 じゃあ今夜の気分は、どっこい実はサナミ姫ッスかー!?」

すっかり卑屈になった俺が勿体ぶって差し出したのは、あろうことか、佐波姫の使用済み軍服だった。
が、しかし。
倉山は、このプレミア付きまくりの物件も、即座に食べた・・・。

「わ、わかった、クララ!
 俺には分かるぞ、つまりお前の好みは、お前の本当に好きなのは・・・
 こっちなんだな・・・!!!???」

俺はおもむろに懐から、一枚のパネルを取り出した。

「どうだ・・・!!!」

俺が脂汗と共に倉山に突き付けたのは、何と、本メルマガ期待の新執筆者・浅野久美の“等身大パネル”だった・・・!!!

倉山はそれをもぎ取ると、これまでと打って変わって静かになり、パネルに見入った。
あまつさえ、満面の笑みを浮かべすらした。
そして静かに倉山は、木々の中に消えていった・・・。

「クララ、お前・・・久美ねえさんが好みやったんや・・・」

辺りには、先刻とまったく変わらぬ静寂が広がっている。
俺は安堵とも戦慄とも分からぬ思いを抱え、再び、“〆切”という追手からの逃走の旅路についた。

さかき(倉山先生、美しき女性陣の皆様方、申し訳ありません、すべては“〆切地獄”が悪いのです)

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