prose

セレーネーの梯子 

流砂は いつも そこにある
気付くことの出来た少しの者は しかし その事実に敢えて触れない
俗衆は 大手を振って 街路に騒ぎ
みるみる足を取られては 吠え声を上げている

今や 空に 月が昇った

彼等は ただ 外径や時刻や角度について論じ
あの蒼さの深いこと
裏側に隠された 公然の秘密
笑みを返してくる女神の物語には
一向に興味を示さぬようだ

「あの月が欲しいの
 両腕で抱いたり 毬のようについたり
 そして最後は 共に眠りたい」
女が そう ねだるので
青年は
僕ならば 魔法まで続く梯子を 掛けてみせます

口の端まで台詞を上らせたが
すぐに思い直して
ただ 寂しげに笑った
sakaki20171211osa

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