prose
白の花の閨の夜の朝の 2017.12.02
蒼白かった 昨夜の頬
冷たさに手指を滑らせ
想像を超えて不憫なことを 再認識しては
涙の粒が溢れて 汚す
あなたは 幾度か 私を傷付けた
虚飾のストーリを振り撒いてまで
私の誇りに 無数の針を突き刺したね
それは追慕の裏返しだったと
けれど 滲む赤褐色と疼痛の質に 変わりはない
よく知っているよ あなたの心身を
それこそ 生まれついての血族のように
哀れな双子の星は 互いをきつく抱いて
遠い地平へ 墜下してみましょうか
現世のあらゆる不幸は 既に見たから
これ以上の酷いことには もう出会えないだろうな と 笑いあう
蒼白く冷たい肌は 今朝も同じ
でも唇だけは紅く濡れ 薄明の中に光ったり
ここには ユリの花の香が 充ちている
野育ち 温室育ち
走りたかった夏のユリ きっと厳冬に掠れてくユリ
様々に取り合わせ 束ねられた 白の花卉は
不具の私たちに 似合うかな
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