prose

self-sacrificeの燠火 

空に

蠍の火が燃えて

素敵な物語になってるって

 

かたや地の娘は

七年前の夏に殺されて 焼かれ

その燠が 草むらの影に残り

今なお微かにくすぶっているだけ

 

亡霊になった子に 世界は淡くて冷たくて

しかし あの大衆は夜毎さわいで 安寧の法について語り続けてたよ

あたかも

俺らこそ英雄 とか 言いたげに

 

魔物に殺された日のことなら はっきり覚えてるよね

あれ以来 七かける七十年にわたり毎日 絶えることなく同じ光景を見てきたから

彼女の首を絞める両手は無骨で 顔と頭を殴る力は強くて

今しも こと切れんばかりだった

頭上から恐ろしい声が繰り返し響いて

「誰もお前を助けに来ない誰も来ない誰も誰も」

果たして 救いの手は 巧妙に追い返されたんだ

 

今なら あの子も分かってる

生き残ってしまったのが奇跡で

同時に

間違いだったこと

 

そうなんだ

あの夜は生き残るべきじゃなかった

すでに心は殺されてたんだし

あらゆる細胞膜のぐちゃぐちゃに摺り潰されて

内容物は溢れ 表皮の下で混ざり合って べつものに変質しててさ

でも脱け殻は辛うじて残っちゃったんだね

そこに命は もう 無かったけど

 

つまり

この七かける七千年の自己犠牲は

無意味

だったって

今の彼女なら

鮮明に

知ってる

 

燠火は間もなく消えるよ、大丈夫

 

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