prose

幸せのためではなく復讐のために生きていると君が言った 

君が零した言葉が脳裏にいつまでも響いている
珍しく本当のことを言うよと
自分は幸せのためではなく復讐のために生きているのだと
だから
今は死なないのだと

深い夜の湿度
空まで続く長い階段
ふたりは昇り
中途にある公園には滑り台とぶらんこ
小さな社
暗がりのなか幽霊は静かに泣いていた

蹂躙された記憶を共有し
傷の痛みを共有し
しかしそれ以上のものは
私たちの間には無いのかもしれず

生きにくい個体と生き易い個体とが
この世にはあり
両者の区別はただ気まぐれに拠っていて
哀しいふたりの子供には
生まれ落ちたことこそが不運であり
不幸の源であったこと

ここからなら湖が見えるね
最上段で私は言う
きっと昼日中ならば
青く美しい水瓶が
きらきらしく晴れやかな湖面が
やはり青い空を映し
惨めな子供たちに笑いかけることだろう
まるで幸せな夏の休日のように

不幸は
消えない
苦しさも焦りも恐れも
消えることはない
ただ君が口にした言葉は「ほんとう」だったから
私はそれを忘れず
君を
大切だと思うのだろう

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