prose

放蕩と静謐の止揚の日に 

夏の窓辺に ひとつの椅子がある
そこに 入れ替わりたち替わり 座る人々
現れては消え
また現れ

空から星は落ちて
必要だったはずの負は すっかり掃除されたようだ
朝焼けの波は ますます身に迫り
既に足先も甲も浸されて さらに脛に 膝にと 上ってくる
水飛沫に感覚は拭われ
冷たさに嬌声を上げるまま
もう すべてを 忘れてしまった

椅子からは 人が立ち上がり 扉へ向かったところだ
もはや背中や手指に見覚えはなく 真名を書き留めておくべきだったと ぼんやり思う
振り返れば
いつしか 窓辺に陽の光 あふれている
夜明け

空くことのない椅子
あれに 終わりの日に座るのは誰なのか
私は知るとも知らぬとも
ただ今は 湿度と情緒を保つ風の 吹き抜けていけばと

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