short-short

※こちらのショートストーリは、メルマガ寄稿文に加筆修正をしたものです。

浴衣(ゆかた)談義の夕涼み~霧島内閣の場合~ 

「総理。
 明日19時より、 地域の夏祭りに参加です」

東田がニコリともせずに、さくら子に予定を告げた。

「あ、そうだった。
 うーん、どの浴衣を着て行こう?
 夏草の柄の型染めもイイし、総絞りの浴衣も高級感あってイイわよね。
 わたし一応、総理だから、立場に見合うものにしないと」

さくら子が悩んでると、さっそく九条が寄ってきた。

「さくら子ちゃん・・・いえ総理は、 背が小さめで細身ですから、可愛らしい細やかな柄が似合うと思います」

「そうそう。
 背が高い方には大胆な柄も似合うんだけど。
 わたしみたいに背が低い場合、大きい柄を着るとちょっとヘンなのよね」

「その点、上背のある東田さんは、派手な柄行でもイケますね。
 僕もそれほど背が大きい方ではないので羨ましいなあ」

さくら子と九条とで話に花を咲かせる。
と、いつの間にか傍らに、秘書官の丹後まで来ている。

「総理が和服で公務に赴かれる場合、側近も和服だと壮観ですね。
 ・・・あり得ないことですが」

丹後の軽口に、さくら子はイイコトを思いついてしまった。

「みなさん、浴衣はどんなものをお持ちなんですか?
 一度、拝見してみたいです」

さて、さくら子の提案の翌日。
執務室に集まった官邸スタッフが持参の浴衣をワラワラと並べ始め、室内はいきなり華やかになった。

さり気なくさくら子が丹後の手元に目をやると、そこには、すっきりとした黒地の浴衣に、古風な織りの白色の帯。

(ちょ・・・丹後さんの涼しげなご尊顔にぴったりで、カッコイイんですけど!)

現役女性首相がまるで乙女のように頬を染め、いたく感動している。
それだけでも十分に”アレ”なのだが・・・今度は横から、何やら異様に得意げな声が響き始めた。

「私もあれから、和服について勉強いたしました。
 身体のデカい私には大胆な柄が似合うという豆知識など、当然に存じております・・・」

東田だ。
そしてその巨体の前に、サッと自分の浴衣を広げたのだ。

すると、な、何とそこには、肩から足まで届くようにドーンと大きく描かれた○○○○○の“萌え”イラストが・・・!!!

~ ○○○○○の中は、各自、お好みの妄想をお入れください ~

「巷の若人の間では今、こういったものが流行っているらしいですな。
 いやはや、デザインには苦労させられましたよ」

(ま・・・まさかのオーダー・メイド・・・?)

一同、戦慄である。

さくら子はといえば、
(東田さんてセンス無い・・・でもそんなこと言いにくいし・・・)
と散々に逡巡している。

と、九条が明るい声で言い放った。

「東田さん、その浴衣はイタイので、作り直しましょう!
 僕、良い呉服店にご案内しますよ♪」

天下のお花畑オトコ・九条守なだけに、容赦ない一言であった。

recent entry

shortstory titles

monthly archive

© Ren Sakaki. All Rights Reserved.