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※こちらのコラムは、雑誌やメルマガ寄稿文に加筆修正をしたものです。

伊勢うまし国紀行3 

本日はまさかの続々編です、って、実は本人が一番驚いているのですが。
おーし、ちょっと記憶をひねり出してみるか。まるで物干し場に残されたまま忘れ去られ、極限まで乾ききった布巾を、渾身の力でもって絞るようにな・・・。

さて五十鈴川を後にした我々は、早速に御正宮へ。
・・・と思いきや、否、これが違いまして。
ガイドの方が穏やかにご説明をくださる中に森を歩き、境内にある皇大神宮所管社、瀧祭神(たきまつりのかみ)を詣るのです。
この神様は、五十鈴川の守護神でいらっしゃいます。
「所管社」ですから、例えば「別宮」などのようには格が高くないそうですが、内宮でも非常に大事に大事に祀られている、特別の神様だそうです。
ここでは願いごとなどはしないのがルール。
まずは自身を顧み、心身を清浄にし、御正宮に向かうための準備を済ませるのです。

今回のお伊勢詣りに限らず、実は私、どちらの神社にまいっても、自分のお願いごとをすることはありません。
まず最初に、私が日々幸せになって欲しいと願って止まない人の顔と名を、思い浮かべます。
そして「どうか、幸せになってくださいますよう」と繰り返すのです。
それから身内の顔を順に思い浮かべて。
最後に自分のこと。「進むべき道がまだどこにあるか分かりませんが、頑張ります。ですから、いつか、道をお示しください」と。
しかし、今、文字にしてみて気づきましたが、考えてみたら、これも立派なお願いごとですね。
それも随分な重大事です。
神様にしてみたら「ご自分で答えを出しなされ」という類のものかも知れません。

そしてとうとう、御正宮。
大きな石段を登り切ったところに、御正殿はあります。
立派な石が並び敷かれた階段というのは、それだけで独特の快さがありますね。
それを一段一段、踏みしめる。
幾度か伊勢神宮を訪れましたが、その度に、この石段の醸す壮麗さに感動するのです。

そしてその石段を登りきると、御正宮の姿が眼前に・・・否、勿論、中は見えないのです。
白布が下ろされ、その宮の立ち姿は参拝者からは直視されないのです。
見えないものを畏れ、敬う。
これは非常に日本人的な感覚であると思います。
たとえば「わびさび」という言葉がありますが、これは無駄を排していって、最後に残った最小限の事物に美しさを感じ、心境の変化や感動を呼び起こす、というものだと私は認識しています。
しかし無駄を排した最後のもの、と言いましても。実際にそれら周囲のもの無くして感動するのではなく、あくまで、取り外していった全てのものを想起しつつ、しかし最後のものから心を揺する。
それが恐らく、日本人の持つ美意識のひとつだと思うのです。
本来の意味合いは違いますが、この美的感覚とも、神の姿が見えないということは、似ている部分があるように感じられます。
実物ではなく、想像することこそが、無限の可能性を秘めているのですね。

さあ、私は、厳かな心もちで以て、参拝を致しました。

ちなみに、その御正宮の御敷地に敷き詰められている白い石。
この石は式年遷宮の年に、宮川の上流から運び込まれるのだそうです。
この神事を、「お白石持行事」と呼びます。
あれ、そういえば、神宮白石クッキーって、ここから来てるんですね!
甘くてサクサク美味しいだけでなく、意義も深い!
当然、あのお菓子の有難みが、私の内でますます肥大化する一方です。

その後は境内のその他の建物を見て回り、神宮に伝わる建築様式について詳しくご説明いただきました。
つくづく、式年遷宮の知恵と言うのは、学ぶべき点が多い。
医学が発達する以前の人間の平均寿命は40歳無かったと聞いたこともありますから、この“20年”とは、よくよく考え抜かれた上での年数なのでしょう。
技術を伝承していくということは、国力の維持をも意味します。
これから一年以内に建て替えられる建物の、茅葺屋根の苔むした様を見るだに、畏敬の念が揺り起こされました。
風情もあり、かつ長年の叡智を感じさせる、勲章胸に飾る老爺の如き佇まい。
木々の枝葉の間から朝日が差し込み、辺りはすがしい空気に満ち満ちて。
私たちは確かに連綿とその血を受け継いできた、日本人であったのだと、実感する時間だったのです。

もしもこれから伊勢に行かれる方には、是非是非、早朝参拝をおススメ致します。
人が朝早くに何らかの行為をすることには、朝、その時刻自体にも、大きな意味があったのですね。

その厳かな気持ちと共に神宮会館に戻った私は、館内に入った途端、すぐさま急ぎ足で・・・
・・・食堂へ向かいました・・・!!!
そして、豪勢な朝餉のテーブルを目の当たりにし、あらためて、天照大御神様の恩恵をしみじみと噛みしめたのでした。
私の口を衝いて出るのは、この一言。
「日本に生れて、本当に良かった!」

 

さかき(さらに続くかも。イヤ、どうしましょうか?そろそろ、やめとく?)

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