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※こちらのコラムは、雑誌やメルマガ寄稿文に加筆修正をしたものです。

The Colorful World 

ミャンマーに来ています。
寺院の建つ山へ向かう途中、でこぼこ道を疾走する車は上下に激しく波打ち、私はその振動に負けじとこの原稿を書いています。

バガンにいます。
バガンとは、海辺の街ヤンゴンから北へ上り、首都ネピドーを通り越し、さらに北上した街です。
湿度高く蒸していたヤンゴンに較べ、バガンはひたすらに熱く乾いています。
昔、まだミャンマーの地に王朝が在った時代、その王都として栄えたのが、バガンでした。
ヤンゴンも、また首都ネピドーも、後に作られた新興の街です。
ヤンゴンはその歴史に示す通り英国統治下の面影を色濃く残し、ネピドーは軍事政権により造成された人工都市。
もしかしたら、ミャンマーの人にとってのソウル・シティとは、バガンに他ならないのかも知れません。

多くの読者にとって意外なことかもしれませんが、実は“ミャンマー人”とは、多用な民族によって構成されています。
中でも大きい割合を占めるのは、先に述べたバガンを王都と栄えた民族、「バーミー」。
いわゆるミャンマー語とは、彼らの使っているバーミー語を指します。
バーミーの他にも、シャン族、チン族、カチン族、モン族などなど。
彼らがもともと住んでいた地域は、現在も「シャン・ステイト」「チン・ステイト」といったように、「ステイト」と呼ばれています。
ミャンマーの地図を見ると、まるで連邦国家の地図のようにも感じられたり。

さて「あおくんときいろちゃん」という絵本をご存じでしょうか。
有名過ぎるほどの名作ですから、幼少時に愛読されていた方も多いかと思います。
ざっと内容を書き出してみますと。
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「あおくん」と「きいろちゃん」が遊んでいたところ、あまりに仲良しのために、いつしか色彩が重なり合い、ふたりは緑色になってしまう。
つまり、「みどりくん」と「みどりちゃん」になってしまった。
それでもふたりは良かったのだけれど、彼らが帰宅したとき、問題が起こる。
玄関口に立つ子供に、家の中の人が言うのです、
「うちの子は『あおくん』だよ、『みどりくん』はうちの子じゃないよ」と。
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細部に間違いがあるかも知れませんが、大筋としては上記のようなお話だったと記憶しています。
その後、“みどり”の二人はどうなったのか。
まだお読みでない方は、是非ご覧になってみてください。

私は水色が大好きです。
しかしだからと言って、全てのものが水色に染まってしまったら、私の中の水色への憧れ、感動は失われるでしょう。
赤や黄色、黒や白などの中にあるから、水色はことさらに美しく瞳に映るのです。
民族や国家についても、同様なのではないかしら。

我々のガイドについてくれたミャンマー人の男性は、バーミーとシャンのハーフです。
彼はシャンの言葉を解し、シャンの文化的イベントの楽しさを享受しながら、一方でバーミーの言葉と文化を愛し、ミャンマー人として生きています。

多様性があるからこそ、全ての個が個の輪郭線を失わないからこそ、世界は眩しく輝く。
あおくんは青色を澄み渡らせ、きいろちゃんはさらに鮮やかに輝き、みどりさんはますます深みを増し。
まるでスーラの絵画のようにきらきらしい、この、幾多の色に充ち溢れた世界を、私は愛しています。

バガンで見る、寺院のシルエットとシルエットとの間に覗く夕日は、切ないほど胸に迫ってきます。

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