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詩を読む昼夜 

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山のあなたの空遠く、
「幸」住むと人のいふ。
ああ、われひとと尋めゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く、
「幸」住むと人のいふ。
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言わずと知れたカール・ブッセ、上田敏訳。
言葉少なであるから尚更、読み返すだに切なさこみ上げる。

以下は立原道造、私のもっとも愛する詩人。
まず「燕の歌(二)」。

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朝をこえ 夜をこえ 望みをこえ
私はどこへ行くのだらう 海よ
私の羽根はもうくたびれた
海よ お前の掌は私を止らせてくれはしない

私はいつか信じてゐた 北の村には
昔の私が待つてゐると さうかしら
海よ お前は教へてくれ きつと知つてゐるから
お前の身体が北の岸に触れる村で
昔の私が私を待つてゐると 教えてくれ

私の旅はもう長い 私の羽根はくたびれた
海よ お前の掌は私を追ふ鞭を持つてゐるきりだ
お前は青いはてしない 私の羽根とすれずれに
お前は波立ち呟いてゐる

夜をこえ 望みをこえ 夢をこえ
私はどこへ行くのだらう 海よ
教へてくれ 北の村で昔の私がやさしい朝と一しよに
私の着くのを待つてゐると 教えてくれ
お前は波立ち呟いてゐる それが私には何だか不吉な裏切りを 海よ お前がしてゐるやうだ

私の羽根はもうくたびれた
私はどこへ行くのだらう 海よ
お前は大きく お前はむごく意地悪だ
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もうひとつ、立原。
「ふるさとの夜に寄す」。

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やさしいひとらよ たづねるな!
─なにをおまへはして来たかと 私に
やすみなく 忘れすてねばならない
そそぎこめ すべてを 夜に・・・

いまは 嘆きも 叫びも ささやきも
暗い碧の闇のなかに
私のためには 花となれ!
咲くやうに にほふやうに

この世の花のあるやうに
手を濡らした真白い雫の散るやうに─
忘れよ ひとよ・・・ただ! しばし!

とほくあれ 限り知らない悲しみよ にくしみよ・・・
ああ帰つて来た 私の横たはるほとりには
花のみ 白く咲いてあれ! 幼かつた日のやうに
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今日はこのまま書棚をひっくり返してみようと思う。
本のにおいを、随分と長く、忘れていた。
仕事とプライヴェイトの雑事を捌きながら、そのうえで「書く」ことはひたすら辛くて、だから私は時々空っぽになってしまうのだろう。

追加。立原で、「夢見たものは・・・」。

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夢みたものは ひとつの幸福
ねがつたものは ひとつの愛
山なみのあちらにも しづかな村がある
明るい日曜日の 青い空がある

日傘をさした 田舎の娘らが
着かざつて 唄をうたつてゐる
大きなまるい輪をかいて
田舎の娘らが 踊ををどつてゐる

告げて うたつてゐるのは
青い翼の一羽の小鳥
低い枝で うたつてゐる

夢みたものは ひとつの愛
ねがつたものは ひとつの幸福
それらはすべてここに ある と
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